あなたのペットを放射能から守るためには - 放射能から身を守る食情報

>>輸入食材の専門店<<

あなたのペットを放射能から守るためには

放射能とペット.jpg

犬や猫などのペットたちは、はるか昔から人間に寄り添い、喜びや悲しみを分かち合ってくれる存在だった。ところが震災後は、見えない放射能や、いつ襲ってくるかもしれない余震の恐怖、節電による猛烈な暑さまで共有せざるを得なくなってしまった。この不幸な事態に、私たちはどう立ち向かえばいいのだろうか−−。 (本誌・大貫聡子、神田知子、國府田英之、小宮山明希、常冨浩太郎、永井貴子/藤村かおり)

 神奈川県鎌倉市に住む47歳の主婦、薫さんは5月に、愛犬ラブラドルレトリバーのラブちゃん(オス、6歳)を連れて海へ遊びに行った。ラブちゃんが下痢と嘔吐(おうと)に見舞われたのは、その夜のことだ。

 かかりつけの獣医師に診てもらうと、
「ただの遊びすぎで、疲れからきたものでしょう」
 と言われたが、「放射能の影響では」という知人のひと言で不安がかき立てられた。

 もともと放射能によるペットへの影響を心配していた薫さんは、震災後はペットフードに混ぜていた野菜をすべて西日本産に変え、昆布が放射能除去にいいと聞くと、野菜を煮るときにとろろ昆布を入れて与えていた。

「私たちよりも体が小さいので、少しでも放射能の影響を受けないように、できる限りのことをしています。本当は、一緒に日本を脱出したいぐらいなんです」

 3月11日の東日本大震災後、環境省にはペットに関する意見や問い合わせの電話やメールが増えている。

 多くは、
「福島第一原発から20キロ圏内のペットを早く助けてあげて」
「民間ボランティアをもっと投入してほしい」
 と被災地のペットのことを心配する内容だが、
「ペットフードに放射能の出荷基準はないのか」
 という飼い主の切実な不安の声もあるという。

◆散歩は雨どいや草むらを避けて◆

この問いに対する答えは、
「ペットのエサはペットフード安全法で原産国名や原材料などの表示が義務づけられていますが、放射能に関する基準はなく、今後も作る予定はありません」(環境省動物愛護管理室)
 というものだ。残念ながら、基準がないと、愛犬家や愛猫家の不安は解消しないだろう。

 自治体や市民団体の調査が進むにつれて、福島県内に限らず、首都圏でも、千葉県柏市や我孫子市など各地で、局所的に放射線量が高い「ホットスポット」ができていることが確認されてきている。

 国際放射線防護委員会(ICRP)は、一般人の年間被曝(ひばく)限度を「1ミリシーベルト以下」と定めているが、千葉県内では毎時0・6マイクロシーベルト、年間換算で5・26ミリシーベルトを超える地域も見つかっている。

 このため、埼玉県川口市や千葉県野田市など、独自の基準を設ける自治体も増えてきた。川口市では、年間1ミリシーベルトに、自然界に元から存在する放射線量を加えた年間1・64ミリシーベルトを安全の基準とし、毎時0・31マイクロシーベルトを超えた保育所や小中学校では、屋外での授業を3時間以内にすると決めた。

 となると、やはりペットへの影響も気になってくる。放射線量が高い地域で暮らすペットへの健康被害はないのだろうか。

 まず、犬についてはどうだろう。ペットに対する放射線の影響について詳しい日本動物高度医療センター(川崎市)の夏堀雅宏院長によると、放射能の影響はヒトも犬も大きな差はないという。

 飼い犬が被曝する可能性が高いのは、外を歩き回る散歩の時間だ。各地の調査では、側溝や雨どいの下、公園の草むらなどで周囲よりも高い線量が計測されたケースが多い。いずれも、犬たちが興味津々で近づいてにおいをかいだり、転げ回って遊んだりしがちな場所だ。

 このため、北里大の伊藤伸彦教授(獣医放射線学)はこう指摘する。

「心配ならば、放射性物質がたまりやすい場所に近寄らせないことが大切です」

 放射線量は雨の後に高くなりがちなので、水たまりにも近づかせないほうがいいという。

 だが、いくら気をつけても、飼い主の言うことをちゃんと聞く犬ばかりではない。このため、前出の夏堀さんはこう言う。

「少なくとも、犬の体についた泥を部屋へ持ち込ませないようにしたほうがいいでしょう。室内に入れるときは、手足とおなかの毛を、草むらでゴロンとしたときには、背中もふいてあげるといい。毛が長い犬は表面積が広くなる分、放射性物質がつきやすい。とはいえ神経質になる必要はなく、普段どおりのブラッシングや、定期的なトリミングをしていれば心配はいりません」

 エサや水からの内部被曝は大丈夫なのか。

「与える水は水道水で全く問題ありません。ペットフードは、心配ならば、原料や産地を調べて、自分が安心できる場所の商品を選べばいいのではないでしょうか」(夏堀さん)

 ただ、犬は人間よりも寿命が短いので、低線量の被曝であれば、「寿命を全うするまでに症状が出る可能性は低い」(同)という。

 では、猫の場合はどうだろう。

 室内から出さない「家猫」の場合は、飼い犬のように屋外で被曝する可能性は低いが、家の中と外を自由に行き来できる「外猫」だとやや事情が異なる。

 前出の伊藤さんが言う。

「とくに、地方で暮らすお年寄りは、猫を自由にさせていることが多い。半日から長いと数日間、家に戻らないことも珍しくないが、その間、どこで何をしていたのかをつかむのは困難です」

 毛づくろいで体にたまった体毛を吐き出すために、外猫は放射性物質で汚染された外の草を食べたり、ときにはネズミを食べたりして、わが家に帰ってくるかもしれない。

 体内に入った放射性物質は尿や糞とともに排出されるので、「排泄物は手早く片づけることが大切」(伊藤さん)だ。

 魚や鳥、ウサギなど、ほかのペットの場合はどうか。

 伊藤さんが言う。

「基本的に屋内で飼う魚や鳥の被曝リスクはほとんどなく、心配はいりません。とくに、水は空気中の放射線を遮るため、水槽の中で泳ぐ魚は外部被曝からより守られることになる。心配すべきは、水槽に入れる水が汚染されているかどうかですが、基準値内の水道水であれば大丈夫です。庭で飼うウサギなどは多少、汚染の影響を受けるかもしれませんが、人が普通に暮らせる地域であれば問題はないでしょう」

 ウサギは野菜を食べるが、東日本産の野菜を与えても心配ないのか。

「外国産の野菜でも農薬の心配がありますし、東日本産だから危険だとは言えません。旧ソ連のチェルノブイリ事故から数年たった時期に日本の農家が使っていた輸入飼料のなかには、いま日本国内で出回っている東北や関東地方産の野菜よりも放射能を多く含むものもあった。それほど神経質にならなくても大丈夫です」(伊藤さん)

 そもそも魚やウサギ、マウスなどのげっ歯類は被曝に対する耐性がヒトより強い。犬<ヒト<サル<ウサギ<魚・虫の順番に、耐性は強くなっていくという。

 ある生物の集団に放射線を照射した場合、半数が死に至る線量の強さを「半数致死線量」という(最下段の表参照)。

 たとえば、ヒトの半数致死線量の推定値は3〜4グレイ(Gy≒3〜4シーベルト)だ。ヒトに3〜4グレイの放射線を照射すると、骨髄の細胞が損傷して白血球や赤血球、血小板が減少する。まったく治療せずにいると、30日以内に半数が感染症などを発症して死に至るという意味だ。

「ヒトと犬、ヤギは同程度の耐性を持ち、霊長類のサルは約1・5倍です。ヒトより体の小さいハムスターは人の約2倍で、ウサギに至っては放射線への耐性が2倍以上になります」(伊藤さん)

 人間より体が小さいからといって、必ずしも放射能に弱いというわけではないというのだ。

 青森県六ケ所村にある財団法人環境科学技術研究所は1995年から、マウスに放射線を照射する実験を通じて、人への影響を調査・研究している。

 福島第一原発の事故で放出された放射性物質と同じセシウム137によるガンマ線を、400日にわたって1日0・05ミリグレイ(0・05ミリシーベルト)の強さで照射した結果では、マウスの寿命やがんの発生率に変化はなかったという。

 同研究所生物影響研究部の田中公夫部長はこう話す。

「1日1ミリグレイ(1ミリシーベルト)に照射量を上げると、メスのマウスでわずかに寿命が短くなりましたが、がんの発生率に大きな変化はみられなかった。このようなことを考えると、長期的に健康の検査をすることは大切ですが、ただちに影響を心配することはないでしょう」

 同様に、ペットを介した飼い主への被曝も心配する必要はないが、気になる場合は口移しで物を与えるなどやたらに接触することは避け、ペットを触った後は手を洗い、排泄物は手早く始末するなど、「感染症の予防と似た感覚で気をつけるといい」(伊藤さん)という。



◆災後100日、被災地のペットはいま◆

福島市の中心部から車で20分ほどの緑深い工業地域にその建物はある。

 鉄筋むき出しの倉庫の前に車を止めると、それまで静かだった倉庫の中から「ひゃん、ひゃん」「バウー、バウッ」という切なげな鳴き声が聞こえてきた。

「いつもは静かにしているんですけどね。どうしても、人が来たことがわかると鳴くんですよ」

 福島県保健福祉部食品生活衛生課の大竹俊秀副課長が目を伏せた。

 ここは福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域で保護された犬約140頭、猫約50匹が住むシェルター(保護施設)だ。

 県が民間企業から倉庫を借りて運用しているが、シェルターであることが知られると、ペットの捨て場所にされる恐れもあるため、場所は一切公表していない。

 倉庫のドアを開けると、ツンとすえた獣特有のにおいとともに、100頭近い犬が目に飛び込んできた。

 およそ250平方メートルの室内には、ゴールデンレトリバーにビーグル、マルチーズ、雑種など、大きさも犬種もさまざまな犬が1匹ずつケージに入って並んでいる。

 ケージの上には、保護した日時と場所、「やせすぎ、耳に疥癬(かいせん)」といった症状や投薬状況を記したカルテが置かれていた。なかには、凶暴なのか「扱い注意」の「注」とデカデカと書かれている犬もいる。 

 大竹さんは言う。

「保護すると、すぐに放射能に汚染されていないかをチェックし、獣医師に診察してもらうのですが、保護直後はストレスもあったのでしょう、多くが下痢や栄養失調など、何らかのトラブルを抱えていました」

 だが、診察を行ったある獣医師はこう証言する。

「警戒区域の住民のなかには、犬の飼い方が昭和30年代から変わっていない人も多い。ワクチンもフィラリアの予防接種も打っていない。今どき、ドッグフードじゃなく、汁かけご飯を食べさせていたりもする。栄養失調も病気も、震災によるものかどうかはわからないですよ」

 いずれにせよ、シェルターに保護され、治療を受けられた幸運なペットはまだごくわずかだ。

 県と環境省は、4月下旬から警戒区域内のペットの保護を行ってきた。

 住民の一時帰宅が始まった5月10日からは「動物班」が2トントラックなどを使って、犬や猫を保護回収する規模を拡大してきたが、6月22日までに保護できたのは犬186頭、猫76匹だ。

 震災が発生した当時、警戒区域内で市町村に登録されていたペットは犬だけで約5800頭。保護できたのは30分の1にとどまる。

 環境省自然環境局総務課動物愛護管理室の西山理行室長は言う。

「今も1日10匹くらいは保護しています。ただし猫はつかまりにくい。防護服を見て怖がってしまうんです」

 環境省は震災直後から、職員を交代で現地入りさせるなどして対応にあたっていたが、「救出が遅い」「動物を見殺しにした」などの中傷がインターネットで出回った。

「ペットの警戒区域からの連れ出しは震災の発生直後から関係機関と協議していましたが、なかなか認められず、実際の救出までに時間がかかりました。その間、抗議の電話が鳴りやまず、通常の業務ができないほどでした。一匹でも多く救いたいと思うのは、私たちも同じなのですが......」(西山室長)

 震災直後から、避難所のペットの診察などに尽力してきた「千葉小動物クリニック」の獣医師である河又淳さんは、対応の遅れの背景には「人災」の側面があると感じている。

「国や県の対応が遅いからと、無断で警戒区域に入ってペットを保護しながら、現場に『どこで預かっています』というメッセージを残さない、明らかにルール違反のNPO団体などもあった。これは保護ではなく"連れ去り"です。動物を思う気持ちは一緒なのでしょうが、お互いを責め合ってばかりで、足並みがそろわず、逆に事態を混乱させていた」

 震災から3カ月が過ぎ、住民と行政の協力態勢が整ってきたところもある。これまでペットの同伴が禁止されていた福島市内の「あづま総合運動公園」避難所には6月6日、犬、猫の避難所ができたのだ。

 前出の河又さんは言う。

「震災の直後は避難所内の雰囲気も殺気立っていて、ペットのことなんてとても言いだせなかった。そのため、ペットを飼っている人は避難所に入れず、狭い自家用車の中で生活していました。しかし、公園を管理する県都市公園・緑化協会と県獣医師会、ペット販売大手のコジマが協力し、避難所住民の理解を得た上で、公園内の建物を改装し、ようやくペットを避難所の近くに住まわせることができるようになったのです」

 犬17頭が暮らす避難所は、施設に動物のにおいが移らないよう、ピンクや緑などカラフルな壁紙が張られている。飼い主は愛犬と好きなときに触れ合えるが、夜9時半までというルールだ。順番で施設内の清掃も行っている。

 毎日、良い環境で触れ合えるからだろう。犬も飼い主もとてもおだやかな表情をしていた。

 原発事故も震災もまだ先は見えない。だが、行政も住民も、前を向くことはできるのだ。

◆特需にわくペットビジネス最前線 迷子札やペット用飲料がバカ売れ◆

 局所的に放射線量が高いホットスポット、水道水からの放射性物質の検出、計画停電−−。愛するペットへの影響を懸念する飼い主は少なくないようだ。

 物言えぬペットのために、できる限りのことをしてあげたい。そんな飼い主の愛情が、ペットビジネスを過熱させている。

 国内の代表的な通販サイト「楽天市場」のペット用品コーナーで「放射能」と入力して検索すると、犬用レインコートの画像がズラリと並ぶ。赤や黄、青といった色鮮やかなものから、ミリタリーデザインのものまでそろう。放射性物質を含んだ雨から散歩中の愛犬を守ろうというのである。

 「オピタノ」のブランド名で、東急ハンズなどでペット用品を販売する「宇サブロー」(東京都江東区)によると、同社の犬用レインコートの売り上げは前年比で3〜5割増。今年はすでに、昨年1年間の販売数(約500着)を上回ったというから驚きだ。

 スキーウエア用の防水素材を使用し、価格は1着6千円から1万円もするが、一部商品はすでに売り切れ、次の入荷は秋だという。

「レインコートだけでは全身を覆えず、胸の部分が開くため、念を入れて防水エプロンを同時に買うお客様もいます」(幸寺司代表)

 ペットの飲み水を考え直す飼い主も増加中だ。

 ペット用飲料水で国内トップクラスのシェアを誇る「アース・バイオケミカル」(東京都千代田区)は、ポカリスエットやオロナミンCでおなじみの大塚グループの会社で、「ペットスエット」や天然水を販売している。都の水道水から乳児の飲用基準を超える放射性物質が検出された3月下旬以降、商品に関する問い合わせが急増した。

「飲料水は震災直後、欠品になるほど売れました。その後も順調で、5月末までの累計で前年比2倍以上を売り上げています。震災をきっかけに認知度が上がったのが大きいですね」(営業企画推進部)

 人間用のミネラルウオーターをペットに与えると、ミネラル分が過剰で、分解できずに尿結石になる恐れがある。そのため、ペット用の飲料水を求める人が増えているのだという。

 ペットにとって怖いのは放射能だけではない。節電が推奨される折、夏の猛暑は命にかかわりかねない。

 暑さ対策では、電気を使わずに涼しくなるグッズが大人気だ。国内126店舗のペットショップを展開するイオングループの「ペットシティ」(千葉市)では、ペットが寝そべるとヒンヤリする「冷感ジェルマット」や首に巻く「ひえひえマリンバンダナ」が人気を集めている。

「今年の夏は、ペットがお留守番している最中に計画停電でクーラーが止まる可能性がある。それを心配した飼い主の購入が増えています」(営業企画部)

 こうした暑さ対策グッズの売り上げは、前年比2割増で伸びているという。

 さらに、余震への対策も進んでいる。

「いざという時にペットを運ぶキャリーバッグを買うお客さまが増えています」(ペット用品最大手の「アイリスオーヤマ」広報室)

 震災前と比べると2倍近い売れ行きで、プラスチック製よりも、軽くて折り畳める布製が人気だ。

「もしもの時にかさばらないのがポイント。関東・東北地方を中心に売り上げが伸びています」(同)

 キャリーバッグを取り扱う都内のペットショップによると、バッグの側面にペットの出入り口が付いているものが売れ筋だ。

「バッグを置くと、そのままペットのハウスとして利用できる。避難所で生活することを考えたうえでの選択でしょう」(店員)

 さらにさらに、ペットが迷子になってしまった場合を想定して、ヒット商品となっているのが「迷子札」だ。ペットの名前や飼い主の連絡先を書いて首輪に着けるペンダント型が多い。皮膚下に埋め込む電子型の迷子札であるマイクロチップも品薄になったという。

「今回の震災でペットと離ればなれになった例もあり、飼い主の意識が高まった。迷子札の売り上げは平常時の3割増です」(ペット用品通販の「ペピィ」)

 ペットを愛するあまり、こんな相談事も寄せられる。

「避難所では行儀の良いペットが人気者です。もしもの時に可愛がられるために、しつけに関する問い合わせが増えています」(仙台在住のブリーダー)

 1兆円規模ともいわれる国内ペット市場。可愛いペットのためならお金は惜しまないようだ。

◆3・11 あの日から飼い主たちは◆

地震に津波、果ては終わらぬ放射能の不安−−。未曽有の事態を前に、ペットの飼い主はどう対応したのだろうか。

 過敏に反応したのは、被災地よりもむしろ、都市で暮らす愛好家たちだ。

 東京都に住む大山さん(仮名)は"わが子"を守るため、1・5リットルで千円以上するハワイで取れたピュアウオーターなる水を愛猫に飲ませているという。

「震災から放射能を気にして、猫用の水を探していました。猫は腎臓が弱いので、マグネシウムなどを含まないというハワイのピュアウオーターを飲ませています。え? 私? 私と旦那は相変わらず水道水を飲んでますよ」(大山さん)

 大山さんのように、水に気を使っている飼い主は多い。東京都内のドッグランでは震災後、備え付けの水道水ではなく、持参したミネラルウオーターを犬に与える飼い主が目立っている。

 なかには、
「原発の事故が収束するまで東京に戻らない」
 と、犬を連れて広島へ逃げた人もいた。

 放射能を恐れる飼い主はみな、
「体が小さい分、私たちより影響が出るのでは」
 と口をそろえる。

 実際のところ、どこまで気にするべきなのか。

 動物病院での勤務経験が豊富で、犬のしつけ家として活躍する後藤三枝子さんはこう話す。

「相談に来る飼い主さんには『普段のままで大丈夫』と答えています。それでも心配なら、いま、ご自分が気を付けている程度のことと同じぐらいの注意を払ってあげてください」

 震災後の食欲低下や下痢症状を、「放射能の影響では」と疑う飼い主もいるが、「ストレスや不安の表れである可能性が高い」(後藤さん)という。

 しかも、人間と同じように、症状や程度には個体差があるようだ。

 2匹の猫を飼う都内の40代女性が言う。

「震災後、一匹はケロッとしていましたが、もう一匹は夜鳴きや、いろんな場所での排泄行為が増えてきたので、ときどき動物用の安定剤を飲ませています」

 不安で体調を崩すペットへの接し方について、東京都港区にある赤坂動物病院の柴内裕子院長はこう話す。

「飼い主の戸惑いを見て、動物も戸惑っていることが多い。余震後に、『大変! 怖いね』と言って急に強く抱きしめると恐怖感をあおるので、飼い主さん自身が平常心でいることが重要。できる限り穏やかな態度で接してください」

 猛暑に節電のダブルパンチで、今後とくに心配されるのが、熱中症だ。

「(飼い犬の)ルナちゃんの熱中症が心配なので、夏は旦那を置いて2人で避暑地に避難する予定です」(東京都世田谷区・50代女性)
 という"強者"もいるが、そんな優雅な飼い主ばかりではない。

 では、どんな工夫をすればいいのだろう。前出の柴内院長はこう提案する。

「大理石のような石の板を置いたり、アイスパックをタオルで包んでおいたりするのも一つの方法です。食欲不振になったら、水分の多いものを与えることも大事。とくに気をつけたいのは、6月末から7月にかけてです。この時期は、人間と同じでまだ暑さに慣れていないため、急激な気温上昇には注意が必要です。幼い犬猫、高齢、病気の犬猫にはとくに配慮してください」

 大げさに、ではなく冷静な対処で、"わが子"の健康を守りましょう。

◆野生の鳥や動物は追跡調査が必要◆

 福島県は面積の7割を森林が覆う。コンクリートやアスファルトで覆われた市街地と違い、森林を汚染した放射性物質は生態系の循環に組み込まれ、生物の間を行き来する。

 なかには渡り鳥のように、長距離を移動する生物もいる。鳥インフルエンザでは、野鳥や渡り鳥の糞などを介して感染が広がった可能性が指摘されている。

 ウイルスと放射性物質は違うので、単純に比較はできないが、高濃度に汚染された野生動物が街や人里を歩き回れば、汚染物質をまき散らす恐れもあるのではないか。

 だが、福島県鳥獣保護センター所長で獣医師の溝口俊夫さんはこう話す。

「まだ実態がつかめていないので、渡り鳥が汚染をまき散らす可能性があるかどうかなんて、いまの段階では言えません。ただ、私たちも野生動物の被曝状況や、人間への影響を調べる必要があると考えています。そうしなければ、野生動物を治療する自分たちの安全も確保できませんからね」

 同センターでは、年に数百匹の野生動物を対象に、筋肉や内臓などの汚染状態を調べ、10年程度にわたって長期的に追跡していく方針だという。

◆錦鯉から猛魚まで 都会でポイ捨てされた1万2千の命◆

家族のように心配されるペットがいる一方で、都会では人知れず見捨てられた命もある。

 多摩川の環境保護を進めてきた川崎河川漁協(川崎市)の山崎充哲さんは、飼いきれなくなった観賞魚や両生類などの放流を防ごうと、2005年から「おさかなポスト」と名付けた生け簀を設置している。多摩川には近年、外来種が繁殖し、生態系の破壊が危惧されていたからだ。

 震災後、この"避難所"がパンク寸前になっている。

「預け入れは、この100日間で1万2千匹を超えました。1〜2月は計2千匹だったのに、震災翌日の3月12日だけで2千匹。計画停電や水槽の故障といったやむを得ない事情をきちんと説明してくれた人も多くいましたが、震災後の混乱で飼うのが面倒になっただけの人もいたでしょうね」(山崎さん)

 なかには、金魚やミドリガメのほか、値の張りそうな錦鯉から、ワニのように口先がとがったガーパイクやピラニアなど"肉食系"の外来魚までいる。"育児放棄"はけっして褒められた話ではないが、それでもポストに預けられただけマシだと山崎さんは言う。

「震災のあと、ポリプテルス(アフリカ産の淡水魚)など熱帯魚の死骸が大量に多摩川に浮いているのを見つけました。3月の冷たい水温で生きられるはずもないのに捨てたのです。『生ゴミ』として処分した人がいたとも聞いています」

 救った魚たちのエサ代だけで月に100万円を超えることもある。だが、山崎さんは800万円の借金をして、"孤児"の命と多摩川の生態系を守っている。

「金銭的にはとっくに破綻していますが、魚たちを見捨てるわけにはいきません。スポンサーを必死に探しているところです」

 一度ペットにした以上、人間が"親"になる以外、救う道はないのである。

◆被災地経験者が語る「重要なのはしつけと首輪」◆

わが子"を守るために、いま、何をすべきなのか。

「まずは、ふだんのしつけが重要」と話すのは、被災ペットの問題を長年追い続けているジャーナリストの香取章子さんだ。

「犬は避難所でムダ吠えしないよう、家以外の場所で他の人や動物と過ごせる社会化としつけをしておくことが重要です。猫はキャリーバッグで移動できるようにしておきましょう」

 携行品で見落としがちなのが薬だ。

「コンビニなどが営業を再開すればフードや水は確保できますが、薬は手に入りにくい。ペットに持病があるなら必ず薬を持って避難することです」(香取さん)

 実際に震災を経験した飼い主の声も聞いてみよう。愛猫の生態をほのぼのと描いた『アメショっす!』(主婦の友社)などの著書もある人気猫ブロガーの「桃にゃん」は、仙台市に住んでいた08年に岩手・宮城内陸地震に遭い、その後、福島県へ引っ越して、今回の大震災に見舞われた。

「08年のときは、地震の揺れで閉めていた窓が開き、そこから猫が飛び出しました。運良く捕まえたものの、ペットが逃げ出すと、飼い主は自らの危険を忘れて追いかけてしまう。自分の身を守るためにも、しっかり施錠しておくことが大事です。また、キャットタワーは完全に固定するか、背の低いものを使ったほうがいい。揺れに驚いた猫が逃げ込むとか、倒れたタワーで窓が割れ、猫が逃げ出してしまう恐れがあります」

 桃にゃんは08年の経験から、緊急避難袋に猫用品を追加した(写真)。今回の震災では放射能の不安もあるため、新たに1カ月分のフードやペットシーツ、猫砂などを用意し、玄関に置くようになったという。

「震災ショックで食欲が落ちるペットも多い。そんなときでも『これだけは喜んで食べる』という一品を見つけ、避難袋に入れておくといいと思います」

 被災地では、避難指示のために泣く泣くペットと別れた飼い主も多い。前出の香取さんはこう提案する。

「野良化や餓死といった悲劇を起こさないためにも、自分の身の安全が確保できたら、必ずペットを連れて避難しましょう」

 万一はぐれてしまった場合は首輪がものをいう。

「今回の震災では『首輪をしていれば』と悔やんでいる飼い主もいます。首輪ははぐれたペットと飼い主をつなぐ鍵になる。室内飼いでも普段から着けることをお勧めします」(桃にゃん)

◆"わが子"を救う8カ条◆


<その一>社会化としつけが重要

<その二>ペット用の避難袋を用意せよ

<その三>キャットタワーは完全に固定

<その四>扉の施錠は完璧に

<その五>首輪はライフライン

<その六>同行避難が鉄則

<その七>薬を持ち出せ

<その八>好物を知ろう

■放射線への耐性の違い■

種     放射線 半数致死線量(Gy=グレイ)
ヒト    γ線  3−4(推定値)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヒツジ   γ線  2.05
イヌ    X線  2.44−3.03
ロバ    γ線  2.56
ヤギ    X線  3.06
モルモット X線  4
マウス   X線  5.21−6.38
サル    X線  5.22−5.46
ウサギ   X線  6.80−9.11
ハムスター X線  7
ラット   X線  7.96
(北里大の伊藤伸彦教授作成)

http://www.wa-dan.com/article/2011/07/post-129.php
タグキーワード
2012-05-02 09:00 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
当サイトのテキスト・画像等すべての転載転用、商用販売を固く禁じます 
Copyright © 放射能から身を守る食情報 All Rights Reserved.
自動積み立て預金を利用する